すぐわかる 在宅医療Q&A

目次
Q1.在宅医療ってなんですか? Q5.どんな病気をみてくれるの?
Q2.在宅で看取るということは? Q6.介護保険を受けられない年齢での在宅医療は?
Q3.訪問診療と往診の違いとは? Q7.こどもの在宅医療は可能でしょうか?
Q4.どんな医療がおこなわれるの? Q8.在宅医療の相談はどこにすればいいの?
[資料] 期待される地域包括ケアシステム
Q5 どんな病気をみてくれるの?
 在宅医療で扱うことの多い疾患を中心に列挙してご紹介します。

 たとえば、脳血管障害の後遺症、加齢障害や老衰、神経難病、認知症、脊髄損傷、肝硬変や腎不全など慢性疾患、呼吸不全や心不全など内科系障害、骨折などの整形外科的障害、悪性腫瘍など。また、大人だけでなく様々な病気をもつ小児の在宅医療もすすめられています。もちろん在宅医療がすべてではありません。病院機能の必要な検査や診療、入院が必要と判断された場合は、主治医から医療機関へと紹介します。

 その他に在宅医療で対応することが比較的多い病気として、寝たきりになるとできやすい褥瘡、排便や排尿のトラブル、湿疹や水虫、巻き爪やウオノメ、目やにや結膜炎などもあります。これらの疾患にも必要に応じて専門医受診も検討しながら医師が対処しています。

 また、多くの病気の管理は医師だけで行うというよりも、訪問看護師を中心として、歯科医師、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパー、デイサービスやショートステイ施設のスタッフと協力して対応することが多いです。たとえば、口腔ケアといって歯磨きやうがいをして、お口の中を清潔に保つことや刺激を与えることは、肺炎を予防したり、病気や障がいをもっても元気に生活する上でとても大事だと言われています。医師は月に1-2回お口の中の診察をして指示を出しますが、一方で訪問看護やヘルパーがご家族と協力して毎日の歯磨きやうがいなどをサポートし、必要に応じて歯科医師や歯科衛生士などに専門的な関わりをお願いしています。
Q6 介護保険を受けられない年齢での在宅医療は?
 介護保険のサービスは65歳以上にならないと認定が受けられませんが(脳血管障害等の特定疾病等では40歳以上で受けられます)、その年齢に達しない方でも、介護保険外で色々なサービスが利用できます。まず、医療に関係したサービスは医療保険を使って利用ができます。これには医師による訪問診療や往診、訪問看護、訪問リハビリに加え、薬剤師による訪問指導や、訪問栄養指導も含まれます。訪問看護や訪問リハビリは、原因となった疾患や病状、退院後の期間などによって利用できる頻度や時間などに違いがありますので、直接医療機関等や地域の支援相談員などに相談しましょう。

 また、障害者手帳をお持ちの方は自立支援法によるサービスの対象者になります。お住いの市町村より区分認定をしていただくと、認定された区分によって受けられるサービスの範囲や頻度が決まります。自立支援法で受けられるサービスには、訪問ヘルパーによる支援や入浴サービスなどの生活介護、行動援護、施設通所や短期入所、ケアホームなどへの入所といった介護給付や、補装具に関する給付、訓練等の給付があります。またこれらとは別に、地域支援事業として日常生活用具の貸与若しくは給付や移動支援などの支援もうけられます。自立支援法によるサービスについては、市町村へ相談をしましょう。

 生まれながらにして重度の障害を持ったお子さんや、若くして疾病罹患や事故などで重い障害を背負った方も、生きること、生まれてきたことの喜びを家族と共に感じながら生きていけること、そこにこそ在宅医療の意義があります。介護保険の対象でない年齢であっても、受けられるサービスはたくさんありますので、ご相談してみて下さい。
Q7 こどもの在宅医療は可能でしょうか?
 重症心身障がいを持つこどもさんも住みなれた家、地域で暮らせるよう取り組みが行われています。

 人工呼吸器や吸引器の小型化、移動車の軽量化などによりこども達は病院や施設を出ることが可能になりましたが、ご家族にかかる介護負担はたいへん大きく、在宅医療の実践には不安と困難がありました。

 長野県立こども病院では介護、教育、救命救急の方々との連携を強め、医療的ケアの知識、技術普及のための研修会や講習会、訪問支援を実施しています。こども病院での見学や実習も可能です。こどもやご家族の医療情報、療育環境情報などを共有するための「長野こども しろくまネットワーク」がこども病院の患者支援・地域連携室で運営されています。これはITを利用し「誰でも」「どこでも」「どんな端末でも」利用できるシステムです。また、こどもの救急搬送時に利用する「救急情報提供カード」の普及も推進しています。そして、医療的ケアをわかりやすく解説したマニュアルも準備しています。これらの取り組みの紹介を含めて、こども病院は「小児在宅医療電話相談」を開設しましたのでお気軽にご利用ください。
Q8 在宅医療の相談はどこにすればいいの?
 かかりつけの医師がいる場合は、まず医師にご相談ください。その医師が訪問診療をおこなっていない場合は、訪問診療をおこなっている医療機関を紹介してもらいましょう。

 また、かかりつけ医師がいない場合などケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談も役立ちます。平成18年より「在宅療養支援診療所」の制度が設けられています。在宅療養支援診療所とは、地域における患者さんの在宅療養の提供に責任をもち、地域の保険医療機関、訪問看護ステーション、介護支援専門員と連携して訪問診療と24時間体制での往診、訪問看護を提供する医療機関のことです。なお、在宅療養支援診療所として届け出をおこなっていなくても、訪問診療をおこなっている医療機関も多いので、まずはかかりつけの医師にご相談ください。

 在宅医療を受けるようになるきっかけとして多いのは、脳梗塞、重症な感染症やがんの治療などで入院治療を受けたときです。入院前と比べて思った以上に体の動きが悪くなったり、認知症が進んでしまったりすることがあり、退院後から通院が困難になることがあります。このような場合、かかりつけの医師に相談するとともに患者さんやご家族を支援してくれるのが、病院の地域連携室や医療相談室と呼ばれるところです。そこには担当の看護師や医療ソーシャルワーカーがいて、退院後の生活を支援するため介護保険をはじめいろいろな福祉制度などの紹介もしてくれますし、かかりつけ医やケアマネジャーや訪問看護とも連絡をとりながら退院までサポートしてくれます。